【スタッフコラム】パリで見つけた“おいしい空間”

暮らしをたのしくする、お菓子を届けたい。フェアリーケーキフェアでは、日々お客さまやものづくりに向き合うなかで、スタッフ一人ひとりが、それぞれ見ている景色があります。

このスタッフコラムでは、フェアリーケーキフェアで働くスタッフが、それぞれの視点で綴る「おいしさのまわりにあるもの」をご紹介。さまざまな場所で出会った風景や体験を通して感じ取った、ここだけの小さな気づきの記録です。

今回は、店舗運営に携わる店長の視点から、旅先での体験をきっかけに見えてきた、接客や売場づくりのあり方について綴ります。

 

「パリで見つけた“おいしい空間”」

—— 「ルミネ新宿店/渋谷店」店長・鈴木

「整っている」だけで、気持ちは変わる

先日、はじめてフランス・パリを訪れました。街へ到着してまず感じたことは、お店ごとに雰囲気は違っても、街全体としては統一感があることでした。

窓は大きくて、店内の様子がよく見えるつくりが多く、外にメニュー表はあっても、ポスターやサイネージでメニューを紹介している店舗はほとんどありません。レジ周りやスタッフの背面にも必要最低限のものしかなく、どこを切り取っても画になる、整った空間が広がっていました。

空間が整っていると、こんなにも気持ちがよくて、美しさがすっと際立つのだなと思い、それからそのことを滞在中なんども実感しました。

 

帰り際にかけられた「Good job!」

特に印象に残っているのが、有名パティシエ「Cedric Grolet(セドリック・グロレ)」を訪れたときのことです。ドアマンが気さくな挨拶と笑顔で迎えてくれ、帰り際には「Good job」とハイタッチで見送ってくれました。

長時間並んで商品を買えたことに対してなのか、不安そうに並んでいた私たちに対してなのか、理由は分かりません。それでも、その瞬間、思わずこちらも笑ってしまい、ただ並んで買い物をしただけなのに、ちょっとした思い出がひとつ増えたような気持ちになったんです。

来店すること自体が“体験”になる。売場の空気がもつ奥深さを、あらためて感じた出来事でした。

街のなかで自然と交わされる「Bonjour」や「Merci」も心地よく、パレ・ロワイヤル庭園でケーキを味わった時間は、パリの空気ごと味わうような、贅沢なひとときでした。

 

パリのお店は、時間づくりも空気づくりも上手

- ゆっくり眺めたくなる、ショップの時間

いろいろなお店をまわっていると、「眺めるたのしさ」をつくるのが本当に上手だなぁと感心します。いくつかのお店を巡るうちに、売場で過ごす時間のつくり方が、思っていた以上に印象に残るものだと感じました。

アートブックが充実した「Artazart(アルタザール)」では、作品や本、雑貨が作家さんごとにぎっしりと並び、思わず目が離せなくなるような、ひとつひとつをゆっくり眺めたくなる陳列空間が広がっていました。
落ち着いた雰囲気のなかで、絵を楽しみながら過ごせる心地よさがあります。

ライフスタイルショップの「Merci(メルシー)」は、入口の外からクリスマス装飾が丁寧につくり込まれていて、店に入る前からワクワクさせてくれる仕掛けがたくさん。
あたたかい照明やオーナメントの使い方も魅力的で、「季節を体験させる」演出がとても印象に残ります。

百貨店「Le Bon Marché(ル・ボン・マルシェ)」や「La Samaritaine(ラ・サマリテーヌ)」では、照明や導線、季節の演出が洗練されていて、歩くたびに気持ちが高まる仕掛けが随所に散りばめられていました。

ただ歩いているだけでも、気づけば自然と長居してしまう。
そんな売場のチカラを感じました。

 

- 空気ごと味わう、パリの食時間

夕食に訪れたレストランでは、料理そのものだけでなく「空気や温度、にぎわいまで含めて味わう体験」が用意されているように感じました。

100年以上続く大衆食堂「Bouillon Chartier Grands Boulevards(ブイヨン・シャルティエ・グラン・ブールヴァール)」は、鏡張りのホールやシャンデリアのある空間には風格があり、ギャルソンがテーブルの紙に直接メニューを書く昔ながらのスタイルも新鮮。
温かみのある接客と店内の活気が印象的で「長く愛される理由」が自然と伝わってきます。

「Pink Mamma(ピンク・マンマ)」というレストランでは、開店と同時に音楽にのりながら手拍子で迎えてくれるスタッフがフレンドリーで温かく、まさに“体験型レストラン”。
内装や食器も可愛らしくて、フロアごとにまったく違う雰囲気を楽しめ、明るい空気に包まれながら、こちらまで気持ちが弾むような時間に。写真スポットの多さも魅力的でした。

ショップもレストランも、「何を売るか」以上に「どんな時間をつくるか」を大切にしているように感じました。「お客様を惹き込む”空気づくり”」とは、こういうことなんだなと、たくさんの発見をいろいろと持ち帰れた気がします。

 

パリで感じたことを、これからの売場へ

- クロワッサンと、忘れられない朝

最終日の朝は、パンとお菓子が並ぶ「Des gâteaux et du pain(デ・ガトー・エ・デュ・パン)」を訪れました。

店内に入ると、赤みがかったウッドで統一された棚やショーケースに、シンプルながらも色とりどりのケーキや焼き菓子、そして、パンたちが綺麗に並ぶ姿が。それ以外、無駄なものがない空間から、自然と商品に目が向く、シュッとした高級感。

商品の良さはもちろんですが、見せ方ひとつで魅力がより大きく変わる...そんな基本を、あらためて思い出させてもらいました。

一方で、店の年季を感じる磨かれたウッドの什器、地元の人たちが自然と集まって会話を交わす様子を目にすると、気どりすぎない、ネイバーフッドなお店づくりが伝わってきます。

目的だったクロワッサンは、これまで食べたことがないほどに、外はサクッと、中はもっちり。
食感も香りも、はじめて味わう驚きのおいしさで、素敵な思い出になりました。

 

- 売場づくりのヒントを持ち帰って

見どころばかりだった、初のパリ街歩き。何気ない買い物が、お店ごとのユニークな売場づくりや接客のあり方ひとつで、心に残る素敵な思い出へと変わっていました。

パリのお店を巡るなかで、店員さんが日本語で「こんにちは」と声をかけてくれたことがありました。それだけで、少し緊張していた心がふっとほぐれ、「来てよかった」と記憶に残る体験になりました。
たった一言の挨拶が、接客を広げ、お客様の気持ちを動かす。その積み重ねが「また来たい」と思っていただける売場づくりにつながるのだと実感しています。

パリで出会った体験を、これからの売場づくりや接客に少しずつ活かしていきたいです。

まずは、お客様が安心して商品を選べる空気づくり。 
そして、そこで過ごす時間そのものが、心地よい“体験”として残ること。

ひとりひとりのお客様が「今日ちょっといい日だったな」「いいお店に出会えたな」と感じていただけると嬉しいです。

おいしさのまわりにあるもの。

記憶に残るのは、味だけじゃない。

お菓子を選ぶときも、手に取ったときも、その時間ごと「たのしい」と感じてもらえることを、フェアリーケーキフェアは大切にしています。

いつものお店や、ふと立ち寄った売場でのひととき。
接客や空気をとおして「お菓子のたのしさ」をこれからもそっとお届けしていきます。

 

これから「お菓子のたのしさ」をより広げていくために、お店やお菓子について感じたことがあれば、ご意見をお寄せいただけましたら幸いです。

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#スタッフコラム

 

※本記事は、フェアリーケーキフェアの店舗運営に携わる店長の視点をもとに、編集部が構成しました。