【インタビュー】画家・田中健太郎さんとフェアリーケーキフェアが考える「大人の贈り物」にぴったりなお菓子とは?

国内外で注目の高まる画家の田中健太郎さん。このたびリリースした「TANAKA KENTAROU "USAGI" ART BOX(田中健太郎 うさぎのアートボックス クッキー缶)」の制作秘話と共に、日頃から大切にしている考え方など、たっぷりと語って頂きました。

僕たちもまだ見たことのない景色へ。
クッキー缶らしくないデザインを探求。

ーー 「大人の贈り物にぴったりなお菓子とは?」というテーマで、このたび田中健太郎さんと一緒に考えてつくりあげた新たなフェアリーケーキフェアのクッキー缶。田中健太郎さんにとっての「大人の贈り物」とは?

「たとえば結婚記念日に花を買うとか、誕生日に何か贈り物っていうのも良いのですが、何もない時に花を買っても気分が良いじゃないですか。普段流れていく日々の中でちょっとだけ嬉しい日をつくる贈り物をイメージしました。相手を想い購入した時から、持って行く道中だったり、渡したときの顔を見た瞬間だったり。そこで楽しい会話が弾む。そんな気持ちを巡らせながら、それぞれの楽しみかたで、暮らしのなかでそっとそばに置いて欲しいなと思ってつくりました。」

ーー 商品に落とし込む際に考えたポイントはありますか?

「いわゆるクッキー缶の従来の可愛らしいイメージにとらわれずに「クッキー缶らしくないものにしませんか?」と最初に提案したところからスタートしたんですよね。」

ーー 綺麗な蒼黒がとても印象的ですよね。田中さんの緻密なタッチと力強いタッチの対比が融合した躍動感のある原画でしたが、どういった思いで作られたのでしょうか?

「僕の作品には植物や動物を細かく描いたものも多くあります。動物がいる”森”だったり、それらの”息遣い”や”気配”のようなものを想像してもらえると思います。今回商品というテーマが根底にあるので、展覧会とはまたちょっと違ったりしますね。フェアリーケーキフェアの信念と僕ができるところを照らし合わせて、僕たちがまだ見たことがないものは何処かなって探求していくうちに、それがいちばん伝わるのがこの一匹のウサギとなって現れました。」

ーー 様々なものづくりも経験されている田中さんならではの視点がたくさん入っているように感じますが、いかがですか?

「”うさぎの、ほら、あのクッキーの...”のような会話の広がりから、それはどこのお菓子なんだろう?と検索したらフェアリーケーキフェアに辿り着く、もしくは逆もあり、僕側のほうから見つけて、このクッキー屋さんはなんだ?これの名前はなんだろう?という風に、どっちも盛り上がればいいなと。そしてそういうときに、ブランドを知って欲しいが前に出てしまうデザインだと僕は少し情緒がないなぁと思ってしまう。」

ーー ウサギが一人歩きしていくようなイメージでしょうか?

「中に入っているアートカード1つとってみても、例えばお手紙のなかにこれが入っていたら「これなに!?」となるんじゃないかなと思って。そこはすごく大事というか。今は何でもスピードが早いので、そういう感じでゆっくり伝わっていく商品もあっていいかなと思うんですよね。風呂敷もそう、あえて包まれててね。わざわざクッキー缶を包んであるという、そんな”いちいち”ってとっても大事なんじゃないかなと思いますね。」

ーー 今回手がけていただいた原画に込めたメッセージがありましたらお聞かせください。

「僕はモノクロで作品を作ってる時も、そこに色を見出しています。これはあくまで僕のなかです。このクッキー缶もできるだけ、見る人の想像を奪わないようにしたいなと考えています。たとえばこれが、子供が帰ってきた時に出すおやつかもしれないし、土曜日の昼下がりにお持たせで頂くかもしれない。もしくは、夜ちょっとお酒と一緒に静かに食べるものかもしれない。それはシーンによって違うと思うんですね。だから全部言いすぎなくて良いかなと。見てる人が自由で良いと思うんです。」

ーー 美術や写真、絵画の作品に触れる感覚に近いと感じます。

「そうですね。展覧会の場合ですと、僕はおしゃべりなのでよく喋るのですが、基本的には作品については喋ってしまわないようにしています。やはり先入観なく感じてもらいたい。何よりもいちばんは、このクッキー美味しいな、素敵だなってなるのがいちばんだと思っています。」

ーー クッキーは何度も試作を重ねて自分たちの納得が行くお菓子が完成しました。うさぎの型押しも田中さんが描いてくださったうさぎから起こしたものです。ご家族にお味見もしていただきましたね。

「以前に試作品を送ってもらったときもすぐに無くなってしまって...!全粒粉クッキーとコーヒークッキーが特に人気でした!」

相手を想い愛を感じるその瞬間を大切にしたい。
誰かに贈ることが嬉しくなるお菓子に。

ーー 今回のクッキー缶にはアートカードや風呂敷が付いてきますが、実物に触れたときのご感想をお聞かせください。

「アートカードも風呂敷もこれだけでプレゼントされても嬉しくなるぐらい良い出来上がりですよね。完成品を手に取った時はテンションあがりました。これはいいですよ、すごく嬉しい。風呂敷はしっかりと大きさがありますし、この独特な素材の手触りも久々に触るとやっぱりなんかいいですよね。自分の絵がのってるのも嬉しいです。何かちょっと良いものを贈る気持ちにさせてくれますよね。」

ーー 田中さんご自身、アートカードをどのようにアレンジして使いたいと思いますか?こういう風に使ってもらいたいというのはありますか?

「これは僕も緊張します(笑)そのくらい凄くしっかりしていて良いです。こういう自分が気に入ったものは、失敗したら嫌だなって思ってしまうほう。どういうペンが合うかな?とか、どうやったら可愛くなるかな?とか。もちろん、このままでも良いと思いますが、僕はイラストを付けて誰かに送りたいなと思っているところです。」

(後日、田中さんにアレンジされたカードを写真に撮っていただきました)

 

ーー そのまま飾っても良いですし、メッセージカードとして受け取っても嬉しくなりますよね。

「僕自身いただき物をもらうことが多いので、贈り物を渡すという気持ちというのは、すごく優しいというか、愛を感じるものだと思っています。」

ーー 今回のウサギにも通じますが「優しさを分かち合う」みたいなものでしょうか?

「そう。たとえば、展覧会へ来て頂けるだけでも僕にとっては凄いことなんですよね。友人であったり、いつも来てくださるあの人だったり、遠方から足を運んでくださるあの方だったり。手土産をいただくこともありまして。たとえば、いつもひよこを持って来てくださるご夫婦がいるのですが、家に子供がいるからとかそういうことを考えてくださってるのかなとか。そんな風に考えてもらうだけでも幸せなことじゃないですか。そう想像をすると喜びとともに愛を感じていつも勉強させてもらっています。」

ーー まさに「大人の贈り物」で広がる愛おしい世界ですね。

「そういう瞬間を日々のなかで見つけるのも“小さなお楽しみ”なのだと思います。このクッキー缶やアートカードを僕や誰かが贈ったときに、ちょっとした会話のなかで「このクッキーおいしいね」とか、「この健太郎君の風呂敷いいよね」と、誰かと誰かのかけがえのない時間のなかへ溶け込めたら素敵ですよね。この商品には季節がないので、いつでも手に取ってもらえて、それを見て思い出してもらえることもありますから。」

ーー 長くそばに置いて愛着が湧く美術作品のようでもありますね。

「誰かに贈ることが嬉しくなるお菓子って僕は素敵なことだと思うんです。そのぐらいの商品ができたというか、とても良いものができたと実感しています。」

ープロフィールー

田中健太郎 / TANAKA KENTAROU

1977年生まれ国内外での個展で作品の制作と発表を続けながら、企業やブランドとのコラボレーションによるプロダクト制作、空間演出、壁画やライブペインティングなど、様々なプロジェクトを行う。著書に「Bon Voyage! 猫と旅する、不思議な世界のぬりえ book」(日本文芸社)、「暗黒グリム童話集」(講談社)、「the first」(Bonpoint)がある。

・instagram:https://www.instagram.com/kentaroutanaka
・HP:http://www.kentarou-tanaka.jp

 

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田中健太郎 展覧会
・会期:2023年5月13日(土) ー 5月28日(日) 
 ※close:5月16日/23日(火)

・会場:Gallery Kasper @gallery.kasper
(三浦郡葉山町一色1462-5)
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