―等身大のボランティア― 坂本美雨×小林マナ 対談

暮らしをたのしくする 「お菓子のあたらしいカタチ」 を目指し、ミュージシャンの坂本美雨さん、イラストレーターの前田ひさえさんと一緒に取り組んだ”あたらしい、おいしさ”プロジェクト。第三弾としてリリースされた「Miracle cat cookie Tin(“神様のいたずら”ネコクッキー缶)」は、収益の一部を身寄りのない動物を保護し、新しい里親を見つける活動を行う動物愛護団体「ランコントレ・ミグノン」へ寄付されています。そこには、少しハードルが高い……と思いがちな「寄付」や「ボランティア」をもっと身近に、気軽に感じてほしいという想いが込められています。

今回は自身も保護猫と暮らし、動物愛護ボランティアにも参加する坂本美雨さんと、ボランティア仲間だというインテリアデザイナーの小林マナさんにお話を伺いました。

  

「自分ができることをやればいい」―等身大のボランティア。

坂本美雨:私は10年ほど〈ランコントレ・ミグノン〉で犬のおさんぽボランティアや、保護動物たちのお世話のお手伝いをしているのですが、マナさんとも〈ランコントレ・ミグノン〉の活動を通して知り合ったんですよね。

小林マナ:そうそう、東日本大震災があった翌年の春に、〈ランコントレ・ミグノン〉代表の友森玲子さんの呼びかけで「いぬねこうしまつりVol.2」というイベントが開催されたんですけど、そこに観に行って友人を介して紹介していただきました。美雨さんが〈ランコントレ・ミグノン〉のお手伝いをしていることは以前からSNSなどを通して知っていて、すごい人だな〜って思っていたんです。

坂本美雨: 当時友森さんと被災地に行ってライブしたりしていて、「いぬねこうしまつり」も、ライブやろうよと。



小林マナ:じつは私、〈ランコントレ・ミグノン〉が人生初のボランティア体験だったんです。それまでは寄付とかボランティアに関してはほとんど知識がなくて。深く調べたこともなかったんです。

坂本美雨:何がきっかけで参加しようと思ったんですか?

小林マナ:やっぱり震災が大きかったと思います。友人や知人も被災地のボランティアに行っていて、私は仕事の関係で参加できなかったのですが、それがずっと引っかかっていて。何かできないかなと思っていたときに〈ランコントレ・ミグノン〉の友森さんと知り合ったんです。震災のあと、何かお手伝いができないかと〈ランコントレ・ミグノン〉を訪れたとき、友森さんからいきなり「新しいシェルターの場所を借りてきたんだけど、マナさん、内装やってくれる?」って言われて(笑)。

坂本美雨:マナさん、インテリアデザイナーですもんね!

小林マナ:そう、それで大工仕事ができる人と一緒にシェルターの内装の図面を引いたり、DIYで犬舎を作ったりして。あと絵が上手な人は壁にイラストを描いたりしていました。

坂本美雨:初めてのボランティアはどうでしたか?

小林マナ:このくらいだったら自分にもできるかなって思いました。普段、仕事でやっていることだし、他の人もそれぞれ自分の得意なことを担当している姿を見て、ああ、自分のできることを、できる範囲でやればいいんだって。その後は写真展の会場構成を毎年お手伝いするようになりました。私は会場構成をして、美雨ちゃんは歌を歌いに来てという感じでご一緒していました。



坂本美雨:「ボランティア」と聞くと、どうしても全て知ってなくちゃいけない、生活とか人生を捧げなくちゃいけないって思ってしまいがちですよね。でも、あんまり気負いすぎると最初の一歩が踏み出せなくなってしまうから、マナさんみたいに「できることからやってみよう」という姿勢は、すごくいいなと思います。

小林マナ:きっと寄付も同じじゃないかと思うんです。

坂本美雨:お金でも時間でも、余裕がある人が応援するというのは欧米では当たり前のことで、私もアメリカで過ごした子ども時代には、お小遣いの25セントを寄付したりしていました。

小林マナ:素敵ですね。そういう文化や考え方が自然と根付いている社会って、すごくいいと思います。

坂本美雨:今回の「Miracle cat cookie Tin(“神様のいたずら”ネコクッキー缶)」みたいに、自分が「かわいいな」と思ったお菓子を買うことで誰かを援助できるのは、寄付という概念を少しカジュアルに、気軽なものに変えるきっかけになるんじゃないかな。

小林マナ:そう、きっかけさえあれば変わるんです。「あ、こんな感じか」って。まさに私もそうでしたから。しかも、おいしいクッキーがきっかけなんて、すごくいいじゃないですか。


 

「逆に自分が幸せをもらった」―保護動物たちとの触れ合い。


坂本美雨:マナさんは、〈ラコントレ・ミグノン〉で保護された身寄りのない犬の「預かりボランティア」をしているんですよね?

小林マナ:はい。〈ラコントレ・ミグノン〉には保護動物たちをお世話するシェルターがあるんですけど、スペース的にも人員的にも手が回らないことがあって。そんなときはボランティアの人が自宅に引き取って、里親が見つかるまでの間、一緒に暮らすんです。

坂本美雨:しかもマナさんは「老犬」専門だと伺ったのですが。

小林マナ:専門というつもりは全くないんですけど(笑)。たしかにこれまで預かった9頭のうち7頭は老犬でしたね。最初に預かったのが年老いた大型犬だったんですけど、本当にいい子で。老犬は足腰が弱っていたり、耳や目が不自由だったりと大変なこともあるのですが、その分、こちらの声に反応すると「え、聴こえたの⁉︎」ってすごく嬉しくなるし、たまに尻尾を振ってくれたりすると本当に愛おしくて。その喜びを知ってからは老犬もかわいいなあと思うようになりました。



坂本美雨:老犬はお世話の面でも大変なことが多くて、預かってくれる人が少ないと聞いていたので、マナさんがいてくれて本当によかった……。でも、老犬となると看取りも避けて通れないのでは?

小林マナ:そうですね。9頭のうち3頭はもらわれて4頭は自宅で看取りました。でも覚悟というか、老犬を預かるうえでそれは頭の片隅にはありましたし、自分のところで亡くなると、気持ちの整理もできるような気がしています。

坂本美雨:“おくりびと”ですね……。本当にすごいなぁ。

小林マナ:そもそも「老犬=引き取り手がない=かわいそう」という気持ちで預かっていないから続いているのかもしれません。さっきもお話ししたように、本当にみんなかわいくて、愛おしくて。自分に幸せをくれる存在だから、また預かりたいなと思うんです。

坂本美雨:わかります。私は週に1回のペースで〈ラコントレ・ミグノン〉のシェルターにいる犬たちをおさんぽさせたり、ケージの掃除をしたりするボランティアに通っているんですけど、その動機は、「犬をさんぽさせてみたい」っていう願望だったんです。不純な動機かもしれないけど、すごく楽しくて、気づけば10年間続けてます。

小林マナ:10年間!しかも毎週⁉︎

坂本美雨:「義務だから」とか、「私がこの子たちを絶対守るんだ!」って、責任を背負い込みすぎると途中で辛くなったかもしれません。もちろん動物たちの世話をしているときは責任感を持っているけれど、ひとりで全部を背負う必要はないんですよね。〈ラコントレ・ミグノン〉は、代表の友森さんやボランティアが力を合わせて、楽しくやっていこうという姿勢なので、そこが自分の考え、感覚と合っているんだと思います。

小林マナ:私もそうです。自分がボロボロになってまでやるっていうのも違うと思うので、できる範囲で一生懸命やる。どうしても難しくなったら相談するし、それを快く受け止めてくれる。そういう気持ちのいい関係性を築けているから、〈ラコントレ・ミグノン〉での活動を続けられているんです。

坂本美雨:そう考えると、ボランティアとか寄付が日常的なものになるには、自分と団体の方々の相性とか、考え方の方向性が同じであるとか、そういう部分も大切なのかもしれませんね。

小林マナ:美雨さんなんて、本当にボランティアが生活の一部ですものね。

坂本美雨:今はSNSでいろいろな情報を集められるから、個々の団体の発信を見て、「ここなら自分に合いそう」とか「賛同できるな」とか、判断の材料にするのもいいかもしれませんね。

小林マナ:じつは私が〈ランコントレ・ミグノン〉の活動に興味を持ったのは、美雨さんの存在が大きいんです。「こんな人たちがすごく楽しそうに参加しているなら、私もやってみようかな」って、そういう気持ちが入り口になってもいいんじゃないかな。

坂本美雨:うん、それくらい気軽に考えて、まずは一歩踏み出せたらいいですよね。それを積み重ねていくと「ボランティア」という言葉を意識しなくても、困っている人にさっと手を差し伸べられるようになれる気がします。

小林マナ:そう、どんどん扉が開いていくような感覚。私もそうでした。いろいろな人に出会ったり、経験したり、何より、これまで感じたことのない感情を動物たちからもらいました。結局、自分が一番得をしてるんです。

坂本美雨:幸せをもらっているんですよね。お互いが持っているものを出して、足りないものをもらう。ボランティアや寄付って、そうやって補い合える、対等な関係が理想かもしれません。

 

Photo_Kosuke Mae
Text_Yuriko Kobayashi

 

小林マナ
こばやし・まな
1998年から設計事務所〈イマ〉を小林恭と共同主催。店舗デザインを主軸にプロダクト、住宅建築、展覧会の会場構成など手がける。現在、2匹の保護猫と、〈ランコントレ・ミグノン〉から預かっている保護犬2頭と暮らしている。動物好きが高じて動物のためのプロダクトも手がけるようになる。犬・猫との幸せな暮らしのためのペット情報サイト「sippo」(https://sippo.asahi.com/)にて預かりボランティアについて連載中。
HP:http://www.ima-ima.com/

坂本美⾬
さかもと・みう
1980年、⾳楽⼀家に⽣まれ、東京とNYで育つ。1997年歌⼿デビュー。⾳楽活動に加え、執筆活動、ナレーション、演劇など表現の幅を広げ、ラジオではTOKYOFM他全国ネットの「ディアフレンズ」のパーソナリティを2011年より担当。村上春樹さんのラジオ番組「村上RADIO」でもDJを務める。2020年、ユニット「おお⾬(おおはた雄⼀+坂本美⾬)」待望のアルバム「よろこびあうことは」を発表。森⼭開次演出舞台『星の王⼦さま-サン=テグジュペリからの⼿紙』に出演。動物愛護活動に⻑年携わり、著書「ネコの吸い⽅」や愛猫サバ美が話題となるなど、"ネコの⼈"としても知られる。⼀児の⺟であり、猫と娘との暮らしも⽇々綴っている。HP:http://www.miuskmt.com/

 

今回の対談であがっていた動物愛護団体はこちら↓↓
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◆ランコントレ・ミグノン
動物の救護を目的とした動物愛護団体。2007年より、東京都動物愛護相談センターから犬猫、うさぎ等の受け入れを開始。動物と新しい家族に出会いの場を提供。ぴったりの家族と出会うだけでなく、もっと多くの動物を保護するためのボランティアさんとの出会いの場にもなっている。HP:https://rencontrer-mignon.org/